藻琴山について

はじめにー

20年ほど、網走市や藻琴山の麓に暮らし、農業をみつめ、土をみつめ、川をみつめてきました。

 

藻琴山についての昔話を開拓農家さんたちから訊いたり、地域の人たちと共に暮らしてゆくうちに、そこには農林水産業をフィールドに敬うべき実学主義の精神のひとつがあるのかも知れないと、胸の中に熱くしまってきました。

 

恩師や地域の人たちから何を学び、なにを見て、なにを感じ、なにを考え、どんなことを語り合い、いかにみなさんと共に行動をしてきたのか?-

 

お世話になった母校や地域のみなさんに感謝の気持ちを込めて、それらを一度まとめ、記録しておきたいと思います。

藻琴山について

 

網走市から見た藻琴山の位置図。

藻琴山(もことやま)は、阿寒摩周国立公園内に位置し、オホーツクと釧路総合振興局との境界にあり、標高は1,000m。


ハイキング客や学校登山、冬山初心者向きとして人気の山。

知床半島や東オホーツク地方、屈斜路湖などへの絶景地、名水銀嶺水や温泉などの恵みもあります。

 

藻琴山は、北海道百名山(北海道新聞社刊)に選定されています。
なお、北海道百名山は、新版として山と渓谷社からも選定されており、重複しているのは82座です。藻琴山は前者にて選定されています。

 また、北海道自然100選にも選定されています。

 

<登山路>
(1)ハイランド小清水725~お地蔵様広場~屏風岩~広場~頂上(登り 約60分)
(2)銀嶺水(大空町側8合目)~広場~頂上(登り 約20分)

登山時には、各登山口に設置してある入林届(登山届)を記入しましょう。

 

<気温>
無雪期 平均12.6℃(サーモクロンG,KNラボラトリーズ/60分間隔)

 
<植生環境>
標高700m付近より日本アルプス2500m級のハイマツ高山地帯となります。
屏風岩周辺のお花畑、銀嶺水付近のウコンウツギは特筆すべき地です。
稜線上はハイマツ、ナナカマド、ダケカンバ、ミヤマハンノキの灌木帯です。
チシマザクラがコース上にて例年6月上旬に開花します。
山域はクマザサとチシマザサにて覆われている環境です。

1984年、当時、東藻琴村立農業高校に勤務されていた吉川勉先生により"藻琴山の高山植物"が出版されています。

http://ci.nii.ac.jp/ncid/BA47815781
 
<動物など>
北海道にしかいないヒグマ、クロテン、シマリスがいます。

ナキウサギはいません。
エゾシカ、エゾユキウサギ、エゾモモンガ等も棲息しています。
野鳥の記録としては70種が確認されています。

(小清水の野鳥(小清水町)P13-P84による)
 ギンザンマシコ、エゾフクロウなどが確認されています。

<地形及び地質>
屈斜路カルデラの外輪山としての位置づけとなります。
その大きさは、東西26km、南北20kmを誇ります。
カルデラとは、スペイン語で釜(かま)の意味、火山の中心にできた、 ほぼ円形の大きな凹地で、噴火後に火口部が陥没したものを指す言葉です。

このカルデラの規模は阿蘇と並んで日本最大級です。

この屈斜路カルデラの形成前は、数10万年前に藻琴山(1000m)、 サマッケヌプリ(895m)、コトニヌプリ(920m)、サマッカリヌプリ (974m)などのいくつかの成層火山が形成されていました。
その後、約12万年前までに最大級の大規模な火砕流の噴火が何度か起こり、屈斜路カルデラが形成されたと云われています。

その後カルデラの中央部付近で、アトサヌプリ火山群(現在の硫黄山)、 和琴半島のオヤコツ溶岩ドーム、屈斜路湖に浮かぶ中島火山(現在の中島)などの溶岩ドームが次々と形成されました。

 

約1万数千年前に屈斜路カルデラ東壁上で摩周火山が活動を始め、約8千年前の大規模な噴火により摩周カルデラ(現在の摩周湖)ができました。

つまり、藻琴山は、屈斜路カルデラができる以前にあったと思われる富士山のような大きな山の欠片とも云える古い地層であります。
よって、数10万年前からの地質であり、由緒ある貴重な植生地帯と云えます。

<往年からの山名>
昔まだ藻琴山という名前がない頃は、釧路アイヌからは「トエトクシペ” 湖の・奥に・いる・者(山、神様)”」、網走浦士別アイヌからは「ウライウシヌプリ=浦士別(川)の山」、女満別アイヌからは「メムヤンベツヌプリ(清水が湧いている泉の先の山)」、美幌町古梅アイヌからは「ツクショッペヌプリ(アメマスの多くいる川の先にある山)などと、それぞれの生活の場から呼ばれて敬われてきている生活圏の山です。

<踏査>
和人によるものとして、大正13年8月2日、当時の網走支庁や網走町の関係者による踏査記録があります。
(現在の大空町東藻琴旧山園小学校よりゴボウ沢つたいにての記録)

<文学>
・狩りの歌(佐久間悟郎著  近代文藝社1992刊)に藻琴山でのヒグマ狩猟シーンがあります。(p77-85)
・湖(うみ)の鷹、樹海(もり)の鷹となりにけり~唐笠何蝶
 ~峠のT字路からハイランド小清水725施設への間の道路カーブ、左地点に歌碑があります。

  看板あり

  道路から30mほどの距離。
  昭和31年9月30日に除幕。

<信仰ほか>
昭和9年9月、当時のニクリバケ「ni(=木)kur(=影)pake(=頭)」こと藻琴原野の一集落、稲富の青年団であった畠沢和一郎、佐藤数馬、成ヶ沢新八、居内末吉、平賀清一各氏たちが、元稲富集落にあった天照皇大神の石碑を藻琴山頂上に遷座させ、網走神社の間作社司が奥の院として頂上に祀りました。
しかし残念ながら、1992年台風にて祠ごと消滅しました。
 
現在の頂上にある石碑は、山中源吉師之碑です。

 

 

<公園指定関係>

阿寒国立公園(昭和9年指定/環境省)→阿寒摩周国立公園へ改名(平成29年/環境省)

国有林指定(林野庁)

国設スキー場(昭和36年指定/林野庁)

藻琴山自然休養林(昭和45年指定/861ha/林野庁)

藻琴山ミズナラ天然林保護林(昭和48年指定/7ha/林野庁)

http://www.rinya.maff.go.jp/hokkaido/hokkaido/policy/conservation/hogorin/syokubutugunraku_168.html

 

<主要な道路状況>
北海道道102号網走川湯線(起点:網走市藻琴 終点:弟子屈町川湯 路線延長45.99km 愛称:芝桜花街道)

北海道道587号跡佐登小清水線(起点:小清水町もこと山 終点:小清水町小清水 路線延長22.2km 愛称:こもれび街道 ※冬季通行止め)

ほか

 

<現在のイベント>
毎年6月第1日曜日  小清水高原夏山開き(小清水町・ハイランド小清水725)

毎年6月第2日曜日  もことやま夏山開き(大空町・銀嶺水コース6合目)

毎年10月最終日曜日 もこと山ふきおろしマラソン大会(大空町)

 

 

<沿線の主な観光地>

ひがしもこと芝桜公園(見頃5月上旬~6月上旬)

http://www.shibazakura.net/

2004年7月17日撮影 頂上より屈斜路湖を望む

(環境省 国立公園管理計画図 阿寒摩周国立公園へ改名前より)

エリア案内看板。

区域内は電線の地中化埋設、道路標識など景観への配慮がされています。

環境省事務所(弟子屈町川湯)